日曜日の午後

夢想花

2008年01月14日 00:03

  昨日と言っても数時間前、日曜日の静かな病室で義兄と話す。農業と会社一筋で寡黙だった兄、69歳。ベッドの背を電動で起こして痩躯を起こして、かすれ声でしっかりした口調で話す。「無理したさけ、こんな体になってしもうて」「趣味持ってなあかんなー、ピアノがんばりや」と兄。「うんそのうち曲もつくるワ」と冗談交じりの私。「時間がたたへん。夜がながい、夜がなかなか明けよらへん」「そうやろうなぁ、夜がほんとうに長いやろうなぁ」そのほか家族のこと、兄弟のこと、ぽつりぽつりとだが、今までしゃべったことがないほど話した。ほんのちょっと前までは、大仰になるからと見舞いを断っていた兄が、なんども「よう来て」と言う。「かわいい看護婦さん見て、元気だしーや、最近おいしいお酒みつけたさかい、早う元気になって飲もう」、吹っ切るようにいすから立って、兄の許を離れる。もう少し居たほうがよかったのかな、疲れはるやろうし。また来るからな、それまで頑張ってな、胸の中でつぶやいて、廊下を何度も曲がって病院を後にした。
  帰宅して、小6の同窓生に電話。まだ現役の彼とやっと話せた。同窓会合唱のことを話す。「こないだの同窓会、ほんまに楽しかったワ、ほんまにようやってくれた」、ほか級友の墓参のことも話した。「あたたこうなったら行こう。そのときにでも、小学校の歌を練習しよう」。「よう電話して、ありがとう」。いきなり昔の口調に戻れる友と昔の口調で話した。
  今日一日、自治会の餅つきを手伝いに行っていた妻が帰ってきて、「参加者が少のうて、寂しかったわ」と言う。何日も前から、役員さんが準備していたのに、さぞがっかりやろう。
  日曜日、小雪まじりの日、思いがさまざまに行き交った午後。

     病床の兄置きて去る冬の午後
     遠き冬電話が還すおさな子に
     気苦労と愛こねつく餅冬晴れ間
 
     ひとつずつ思いはらんで雪が舞う






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